ダージリンティの入れ方と、アレンジティーの飲み方
日本人に人気のダージリンティ。
名前の響きも良いですね。
「ファースト・フラッシュ」や「セカンド・フラッシュ」と、口にすると紅茶通の気分になってしまいます。
ましてや、茶園名を言うともう専門家の雰囲気。
香り高い紅茶で、楽しいティータイムが過ごせます。
紅茶の王様ダージリンティを紹介いたします。
ダージリンは、ざっと言えば北インド、ヒマラヤ山麓ふもとの高地一帯の地域を指します。詳しくは、インド西ベンガル州の最北端、ブータンとネパールに挟まれた高原地帯。
チベット語で、ダージリン(Darjeeling)とは、Dorji (ドルジ)と Ling(リング)が合わさった名前。ドルジは雷神の意味、リングは土地の意味です。よってダージリン(ドルジリング)は、チベット語で「雷神の土地」の意味となります。
大英帝国の植民地であった時代のインドには、「東インド会社」がありました。その会社職員でカルカッタ(今のコルカタ)に住む人々には、最初は高原の保養地(避暑地)がありませんでした。
何しろ暑い国に滞在している英国人にとって、避暑地は天国と言って良い場所。そこで、山奥のドルジリング(ダージリン)に白羽の矢が立ちました。それまで、ここはほとんど人の住まない山林地帯でした。
1829年にヒマラヤの探検家としても知られていたJ.W.グラント知事がG.W.ロイド大尉と共に、この地へ調査に来ました。そして1838年から開発が始まります。1842年にはシリグリ~ダージリン間の道路が完成し、さらに1869年に馬車の通れる道が出来ました。
≪トイ・トレインToy Train(ダージリン・ヒマラヤ鉄道)≫は、1881年に全線開通。今では、世界遺産となってます。
1841年、ダージリンの東インド会社初代管理官D・A・キャンベルが、自宅の庭に中国種の茶樹を植えました。
1823年に存在が知られ、1835年に茶樹の一種だと認められたアッサム種ではありませんでした。ダージリンの気候(昼夜の寒暖差が激しい)と風土が、中国種の茶樹に良く合いました。
そして1874年までに113の茶園が開設されました。
標高500m~1800mの土地に、現在は83前後の茶園が存在しています。
茶樹も古いものが多く、茶園経営も困難なところも出ています。
一部の茶園は、有機紅茶などに転換して存続しています。
大事なことは、農産物ですから、過去に最高の品質の紅茶が製造されたからといって、その茶園が毎年同じ高品質な紅茶を製造するとは限りません。色々な要因で出来具合は、毎回違ってきます。
特にダージリンティは、シーズンによって茶葉が違います。
そして、その年の出来た順番から通しロット番号を付けて、オークションで競り買いしていきます(例:DJ-1、DJ-2、、、)。
また近年は、プライベート取引で、茶園と契約して購入する場合も有ります。
3月~4月の1番摘み(ファーストフラッシュ)では、外観は緑茶のような浅緑色の茶葉とチップ(芯芽)が混ざっています。発酵が進まず緑茶に近いのです。水色も淡いオレンジ色で、香味も緑茶に似た渋みがあります。
冬には休眠していますから、その年の初めてのダージリンティ。
故に「紅茶のボジョレーヌーボー」とも呼ばれます。
5月~6月の2番摘み(セカンドフラッシュ)では、茶葉は茶褐色の外観です。その中で良質なものは、≪マスカテルフレーバー(葡萄のマスカットのような香り)≫を有し、重宝されます。
なぜその香りを有するのか、色々な説が有ります。
昼と夜の温度差が激しいので、霧が発生し、その為独特の香りが形成されるとか、グリーンフライというウンカ(虫)の一種が茶葉をかじるところから生じるとか。
実際は、気候(温度差による霧、雷と雨が多い)や土壌、風土の総合的な要因で、独特の香りが形成されます。高級紅茶、紅茶の王様と言われる訳です。故に「紅茶のシャンパン」とも呼ばれます。
9月~10月の秋摘みも2番摘みのような茶褐色をしています。
秋摘み茶の中で、2番摘みのような香りの良いものが少量出来ます。
但し大体は、風味が劣るのでブレンド用になります。
ダージリンティは、リーフティの場合、良い香りを抽出させるため、7mm~12mmのオレンジ・ペコー(以下OPと略)タイプの大きな茶葉にしているケースが多いです。
ティーバッグもリーフティも、『ゴールデン・ルール』に従って抽出いたします。一番大事なのは、香りを活かす抽出。
香りを楽しむため、まずはストレートティを味わいます。
その為には、ティーバッグだと1分30秒を目安に蒸らします。
リーフティの場合は、目安は大型の茶葉OPでストレートティの場合3分です。
もちろん、どの紅茶もミルクティにして美味しいですが、ダージリンティの場合「渋み」がありますので、ミルクティの場合プラス1分~2分蒸らす時間を足します。ですから、大抵のリーフティOPでは、ミルクティの場合4分~5分となります。
ダージリンティは、レモンティにはしません。
折角の香りがレモンの香りで台無しになってしまいます。
また、ダージリンティの「渋み」と合いません。
ストレートティで香りを楽しむのが一番ではありますが、それでもアレンジティを紹介します。
ダージリンティのホットティをティーカップに入れ、オレンジスライスを浮かべます。シャリマとは、インドカシミール地方の花園の名前です。
カップに浮かんだオレンジが、大輪の花びらの様に見えるところから名付けられました。オレンジはレモンと違って、そのまま入れておいても渋くなりませんのでOKです。
上述の「シャリマティ」のオレンジスライスに、スパイスのクローブを刺します。ですからやり方は上と同じ。
オレンジとクローブの相性が良いので、このメニューも美味しく楽しめます。
マスカット(生、缶詰でも可)を4個用意し、皮を剥きます。
予め温めておいたポットに茶葉(1杯分)と、熱湯150ml(1杯分)と皮を剥いたマスカット2個を軽くスプーンで潰して、一緒に入れ抽出します。
ティーカップに残り2個のマスカットとロゼワイン(15cc目安)を入れ、抽出した紅茶を注げば出来上がり。
ヒマラヤ登山ガイドの「シェルパ」が、山道の野ぶどうを摘んで紅茶に入れたことから、名付けられました。
ダージリンティは、ストレートティが一番ですが、「渋い」と感じたら、ミルクティにすれば美味しくいただけます。
元々ウッディな風味もあるダージリンティですから、他の紅茶とは違う独特の風味のミルクティとなります。
ダージリンティはフルーツと相性が良いです。
マスカットやオレンジ、メロンなどと一緒に。
しっかりと抽出し、「渋み」のあるダージリンティでしたら、クリームも楽しめます。
こってりとしたチーズ、くせのあるチーズは合いませんが、上品な香りのレアチーズケーキ、スフレチーズケーキなら美味しくいただけます。
ダージリンティは、中国種の茶葉で製造されているものが多いです。
中国種は、日本茶緑茶の茶葉として一般的です。
ですからダージリンティは、少し薄めに抽出したら和菓子とも合います。
煎餅(せんべい)も合いますし、「渋み」を感じる場合は、甘い和菓子が宜しいです。
ダージリンティは、香り高い紅茶で有名です。
香りに敏感な日本人が好む紅茶。
但し、生産地が限られていますので、その生産量も少なく、極上品は高い値段で取引されます。また生産量の何倍もの茶葉が、その人気ゆえ「ダージリンティ」の名前で出回っています。
とても高額なダージリンティを購入してその香りを楽しむのも良いですが、リーズナブルな価格の紅茶でも色々と楽しむことが出来ます。